「徳男くん、三っちゃん来たよ!」
湘北高校のメンバーが体育館に入ってきた。大好きな三っちゃんの姿は、誰よりも早く見つけることができる。
「せーの!」「三っちゃーん!」
徳男くんと一緒に名前を叫ぶ。
三っちゃんが恋人になってから、初めての試合。堂々と名前を呼べることがうれしくて、応援にも熱が入る。
私たちの姿を見つけた三っちゃんは、駆け足でこちらへ向かってきた。
「おい、恥ずかしいだろうが」
小言を言われても、いつもの旗を握りしめたまま離そうとしない徳男くんを見て、つい笑ってしまう。
「それから、ナマエ」
「え、私?」
「『三っちゃん』じゃねえだろ」
「え?」
「名前、オレの。ちゃんと呼べ」
三っちゃんはぶっきらぼうに言い放ち、頭を掻いた。私もつられて頬が熱くなる。
「えっと」
「おう」
「ひ、寿くん」
「……おう」
「私、たくさん応援するから」
「……」
「だから、がんばってね! 寿くん!」
しっかり目を見て名前を呼ぶ。ほんのりと頬を染めた寿くんはニヤッと笑うと、「まかせろ」とコートに走り出した。